【コラム】ポットスチルの日本語は、蒸留機?蒸留器?

ガイアフローは「蒸留機」

こんにちは。代表の中村大航です。
コラムでは、ウイスキーに関連したテーマについて、私が書いていきます。

今回はポットスチルの日本語について。
ときどき、お客様から下記のようなご質問をいただきます。

質問「ガイアフローさんでは、ポットスチルのことを蒸留機と表記しているけれど、蒸留器が正しいのではないですか?」

それに対して弊社では、以下の様にお答えしています。

回答「酒税法では単式、連続式ともに『蒸留機』と表記されています。ガイアフローでは酒税法に準じた表記をしています。」

酒税法では「蒸留機」

実際、酒税法を読むと、「蒸留機」という表記がされています。

以下、酒税法からの抜粋です。

〜引用はじめ〜

九 連続式蒸留焼酎 アルコール含有物を連続式蒸留機(連続して供給されるアルコール含有物を蒸留しつつ、フーゼル油、アルデヒドその他の不純物を取り除くことができる蒸留機をいう。次号イ及び第四十三条第六項において同じ。)により蒸留した酒類(これに水を加えたもの及び政令で定めるところにより砂糖(政令で定めるものに限る。)その他の政令で定める物品を加えたもの(エキス分が二度未満のものに限る。)を含み、次に掲げるものを除く。)で、アルコール分が三十六度未満のものをいう。

十 単式蒸留焼酎 次に掲げる酒類(これらに水を加えたものを含み、前号イからニまでに掲げるものに該当するものを除く。)でアルコール分が四十五度以下のものをいう。
イ 穀類又は芋類、これらのこうじ及び水を原料として発酵させたアルコール含有物を連続式蒸留機以外の蒸留機(以下この号及び第四十三条第七項において「単式蒸留機」という。)により蒸留したもの

〜引用おわり〜

以上のように「蒸留機」という表記は、ウイスキーの項目には無く、焼酎の分類の中で登場しています。ですので、ウイスキーのポットスチルの日本語が「蒸留機」であると、直接的には書かれていません。

ただ、上記の様に酒税法では、もろみを連続的に供給して、連続的に蒸留できる蒸留機を「連続式」と定義し、それ以外の連続的に蒸留できない蒸留機を「単式」と定義しています。

ウイスキーのポットスチルは、酒税法の「単式蒸留機」に分類されています。

本来の漢字は「蒸溜機」

本来の漢字は「蒸溜機」でしたが、第二次大戦後、「溜」を、常用漢字の「留」で代用して「蒸留機」と表記しています。

竹鶴ノートでも「蒸溜機」

歴史を紐解くと、ジャパニーズウイスキーの貴重な文献である、1920年に竹鶴政孝氏が書いた「実習報告(通称:竹鶴ノート)」でも「蒸溜機」と記されています。(「溜」は更に古い字「餾」が使われています)

手元に竹鶴ノートをお持ちの方は、ポットスチルの図が描かれたページを開いてみてください。

ニッカウヰスキー 竹鶴ノート
https://www.nikka.com/80th/story/note/

メーカーの表記は各社各様

他のウイスキーメーカーのホームページを確認してみると、表記は各社毎に違いがありました。

サントリー「蒸溜釜」または「単式蒸溜器」
ニッカ「ポットスチル」
キリン「蒸留器」または「ポットスチル」

各社がいつから上記の表記を採用しているのかは分かりませんが、それぞれの歴史の中で理由があって使われていると思われます。

なお、連続式蒸溜(留)機については、全社同じ表記でした。

初留と再留の呼び方は?

一般的にウイスキーは2回の蒸溜を行い、1回目を初留、2回目を再留と言います。

それぞれの蒸留機の呼び方は、英語で初留の蒸留機を「Wash still」、再留の蒸留機を「Spirit still」と呼びます。

日本語ではそれぞれ「初留釜」と「再留釜」と呼びます。もしくは「初留蒸留機」と「再留蒸留機」です。

以上、ポットスチルの日本語に関するお話でした。

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