蒸溜所
Our Distillery
オクシズで育ったヒノキをふんだんに用い、自然と一体になった蒸溜所。静岡の風土に根ざした、自然と調和するウイスキー造りを目指しています。静岡市産の杉材の発酵槽や、地元の薪の火で蒸溜するポットスチルなど、静岡蒸溜所ならではのウイスキー造りを体感できる見学ツアーを随時開催しています。
建築
Architecture
静岡蒸溜所の建物は、日本の美と西洋文化の融合をテーマにデザインされています。
静岡在住のアメリカ人建築家デレック・バストン氏とのコラボレーションにより、内外装に静岡の木材を多用した唯一無二のウイスキー蒸溜所が建設しました。
その造りは、軽井沢ウイスキー蒸留所をはじめ、国内外の数多くのウイスキー蒸溜所を参考にしています。建物内では自然な空気の流れが起こり、二酸化炭素や熱気が常に外へ排出されています。また、見学ツアーの開催を前提として、見学客の視線や動線を設計しました。見た目の美しさだけでなく、機能的なデザインを兼ね備えています。
立地
Area
静岡蒸溜所は、静岡県静岡市のオクシズ(奥静岡エリア)の、玉川と呼ばれる地区にあります。
JR静岡駅から20km以上、北上した山あいです。静岡市を流れる一級河川 安倍川の支流である、安倍中河内川のほとりに建っています。この川は清流として有名で、翡翠色をした美しいカワセミがおり、夏には鮎釣りをする人を多く見かけます。
標高は200m前後で、周囲は400m超級の山に囲まれ、市街地より気温は常に2〜3度は低く、天候もいわゆる山の天気です。夏の日中は30度を超え、冬の早朝には-10度近くに下がるときもありますが、雪が降ることはありません。夏も冬も湿度が高く、雨の日には山々にモヤがかかります。川に沿って、風が強く吹く日もよくあります。
玉川地区では、たくさんの野生動物を見かけます。子猿を背中に乗せた親猿が道を横断するるのは日常の光景です。他にもリスや狸、鹿、猪、そして時には熊の目撃情報も。空を見上げると、サギやセキレイ、ウグイス、ツバメ、そして川ではカワセミの姿も。
静岡の豊かな山の自然が、ウイスキーを育みます。
試飲室
Tasting Room
蒸溜所内に設けられた試飲室からは、ずらりと並んだ蒸留機がご覧いただけます。
ヒノキの一枚板のカウンター、日本の伝統美を昇華させたバックバーなど、静岡蒸溜所ならではの空間があります。ポットスチルで蒸留されたウイスキーの原酒が流れ出る光景を眺めながら、どうぞグラスを傾けてください。
こちらでは有料で、静岡蒸溜所の原酒や、ガイアフローが輸入する世界のウイスキーがお飲みいただけます。また、これらのウイスキーをボトルで購入できます。
※試飲室への入場は、見学ツアーにご参加の方だけに限らせていただきます。
静岡のウイスキー造り
Our Process
静岡蒸溜所は、代表の中村が「愛好家として、自分が飲んでみたいウイスキー」を造っています。
今から遡ること百年以上前、「日本ウイスキーの父」竹鶴政孝氏がスコッチウイスキーを現地で学び、その製法を基に日本で誕生したのがジャパニーズウイスキーです。
静岡蒸溜所も、スコッチウイスキーの製法を細かに研究し、「スコッチに勝るとも劣らない日本ウイスキー」を造るためのノウハウを日々積み上げています。原材料から設備の素材、そして蒸留方法まで「静岡らしさ」を追求し、他の蒸溜所とは違う、唯一無二のウイスキー造りを目指しています。
大麦麦芽
Malted Barley
静岡蒸溜所では、様々なモルト(大麦麦芽)を原材料にしてウイスキーを仕込みます。
本場スコットランドのウイスキー用モルトをはじめ、ビール用モルトは英国、ドイツ、フランス、オーストラリア、カナダなど、様々なモルトで仕込み、どんな味わいになるのかを実験しています。
そして、日本産、静岡県産のモルトを使うのも静岡蒸溜所の特徴です。2015年、ジャパニーズウイスキー業界で、静岡蒸溜所が初めて「100%日本産モルトウイスキー」「100%静岡産モルトウイスキー」の製造を提唱しました。静岡では実際に、毎年かなりの割合で日本産モルト、静岡県産モルトでウイスキーを仕込んでいます。
麦芽の粉砕
Milling
最初の工程は、モルトの粉砕です。
原料のモルト(大麦麦芽)は、建物内のオレンジ色のサイロに貯蔵されています。
ガイアフロー静岡蒸溜所の1仕込みは、1トン。サイロから取り出されたモルトは、異物を取り除かれた後、モルトミル(麦芽粉砕機)で粉砕されます。
このイングランド製ポーティアス・モルトミルは1989年に造られた機械で、スコットランドの多くの蒸溜所で使われています。軽井沢ウイスキー蒸留所から移設された、歴史あるモルトミルです。
仕込み水
Mother Water
ウイスキー造りに使われる仕込み水は、蒸溜所の傍らを流れる安倍中河内川の伏流水です。敷地内に井戸を掘って、地中から汲み上げて使っています。
静岡市の水源にもなっている清らかな水の硬度は70。国内の蒸溜所の中では、山崎蒸溜所の90に近い高さです。
糖化
Mashing
糖化は、アルコールの元となる糖分を生成抽出する工程です。
粉砕された麦芽を、高温のお湯と混ぜ合わさせ、マッシュタン(糖化槽)に投入されます。お湯が麦芽の持つ糖化酵素を活性化させ、麦芽のデンプンを糖分に変えます。糖分が溶け出したお湯のことをウォート(麦汁 ばくじゅう)と言い、糖度は13度前後になります。
発酵
Fermentation
ウォートを、ウォッシュバック(発酵槽)に移し、酵母を添加して発酵させ、アルコールを造ります。
酒造酵母が麦芽糖を消化して、お酒であるエタノールを造ります。およそ36時間で約7%以上のアルコールが生成されますが、同時に大量の二酸化炭素も排出し、激しく泡立ちます。酵母による発酵が終わると、その後は乳酸菌による発酵が続きます。そうして出来た発酵した液体を、ウォッシュ(もろみ)といいます。
木製発酵槽
Wooden Washback
静岡蒸溜所のウォッシュバック(発酵槽)は、メンテナンスが容易なステンレス製ではなく、洗浄や維持管理に手間のかかる木製です。
木製発酵槽は断熱性に優れ、理想的な発酵温度を維持します。また、木の中に酵母や乳酸菌などが住み着き、酒造りに向いた環境を形成して、ウイスキーに豊かで複雑な味わいを産み出します。
静岡の木槽は、木材違いで2種類あります。軽井沢蒸留所でも使われていた米国産オレゴンパイン材と、静岡の杉材です。日本の杉をウイスキー造りに活かすという発想は、静岡蒸溜所が最初です。静岡ならではの味わいを醸し出すために、欠かせないものと考えています。
蒸留
Distillation
ウイスキー造りの中で、特に大事なのが蒸留の工程です。
ポットスチル(蒸留機)を使い、ウォッシュを2回蒸留します。蒸留することで、ウォッシュに含まれるアルコール分を抽出し、凝縮するのです。1回目の蒸留を初留、2回目の蒸留を再留といい、蒸留されたばかりの液体をニューメイクスピリッツ(ウイスキーの原酒)と呼びます。この段階では、まだ無色透明で荒々しい味わいです。
静岡蒸溜所では、珍しいことに3基の蒸留機があります。
スコットランド製の薪の直火による初留釜W、軽井沢ウイスキー蒸留所から移設した初留釜K、そして同じくスコットランド製の再留釜S。この3基を駆使して、数種類の違ったタイプの原酒を造っています。
蒸留機 W
Pot Still W
スコットランドのフォーサイス社が製作したウォッシュ・スティル(初留釜)です。
世界でも希有な方式、薪の直火によって蒸留します。これは200年以上前、スコットランドでまだ密造が当たり前で、小さな蒸留機しかなかった時代に行われていたとても古いやり方です。
静岡は、そのスケールを拡大して現代に蘇らせました。蒸留機の下にある大きな竈(かまど)の中で、たくさんの薪を焚き、炎で釜を加熱します。中の熱気は凄まじく、竈の中は800度近くに達します。その非常な高温がウォッシュを焦がし、原酒の味わいをまろやかで力強いものにし、長い余韻とトースト香を与えます。
燃料の薪は、地元の山の間伐材を丸太のまま運び、蒸溜所内で薪割りをした後、数ヶ月間の自然乾燥を経ています。静岡の山の恵みが、唯一無二のウイスキーを創り出します
蒸留機 K
Pot Still K
いまや伝説となった軽井沢蒸留所で使われていたウォッシュ・スティル(初留釜)です。
2012年に閉鎖された軽井沢ウイスキー蒸留所に存在した4基の蒸留機のうちの1基。実際には3基の状態の良いパーツを組み合わせて、再組立しました。釜本体は、再留釜として使われていました。
釜のサイズに対し、ヘッドやラインアームが長く、独特のシェイプを持っています。蒸気の間接加熱による蒸留と相まって、ライトでフルーティー、エステリーな酒質を産み出します。
熟成
Maturation
熟成は、ウイスキー造りの中で、もっとも時間がかかる工程です。
蒸留によって産み出されたニューメイクを、木製の樽に入れて何年間も熟成させます。ジャパニーズウイスキーになるためには、最短でも3年間の熟成が必要です。
樽の種類は、バーボンウイスキーの熟成に一度使われた古樽をメインに、シェリー、ワイン、ブランデーなどの古樽を使いますが、時には新樽を使うこともあります。
サイズは200L(バレル)がメインで、他に500L(バット), 480L(パンチョン), 250L(ホグスヘッド), 225L(バリック), 120L(クォーター), 50L(オクタヴ)など、様々なバリエーションを使っています。
無色透明で荒々しい味わいだったニューメイクは、樽に入れてゆっくり寝かせることで、琥珀色でまろやか、かつ複雑な味わいを持つウイスキーに生まれ変わるのです。
ブレンド
Blending
バランス良く調和の取れたシングルモルトを産み出す工程が、ブレンドです。
熟成した原酒は、ひと樽ごと、様々な違った味わいを持っています。それらの原酒をかけ合わせて、ひとつのハーモニーを感じられるように調合していきます。
その作業を行うブレンダーは、数百の原酒の候補の中から、自身の感覚を駆使して丁寧に数十の樽を選び出し、絶妙のバランスに辿り着くまで試行錯誤を繰り返します。
静岡蒸溜所が目指すのは、飲みやすく、飲み飽きない味わいです。例えるなら、心を許して永く付き合える親友のようなウイスキーです。
見学ツアー
Distillery Tour
ツアー内容
ガイアフロー静岡蒸溜所内をくまなくご覧いただきます。
弊社ガイドが、みなさまをウイスキー造りの現場にご案内して、静岡ならではの製造工程を分かりやすくご説明いたします。
軽井沢ウイスキー蒸留所から移設された設備や、静岡産の杉製ウォッシュバック(発酵槽)、薪直火加熱のポットスチル(蒸留機)など、他では見ることのできないものばかり。熟成庫ではウイスキーが詰まったたくさんの樽が、みなさまをお待ちしております。
見学終了後には、テイスティングルームでお好きなウイスキーを飲んだり、ボトルで購入したりできます。蒸溜所でしか買えないウイスキーやグッズがあります。※試飲は有料です。
見学時間
見学の所要時間は60分程度。 試飲は最長60分。各日のスタート時間については、予約サイトにてご確認ください。
お申込について
見学ツアーは有料となっております。(20歳未満は無料)
予約受付サイトからお申込ください。