静岡蒸溜所 代表の中村です。

2024年2月19日〜21日、小諸蒸留所にて開催されたワールド・ウイスキー・フォーラムに参加し、セッションに登壇してまいりました。一般的には、あまり知られていないイベントですが、そのレポートを共有しようと思います。

※掲載している写真は、私が撮った物と、フォーラム事務局提供のものを使用しています。

ワールド・ウイスキー・フォーラムとは

ワールド・ウイスキー・フォーラム 公式サイト

公式サイトには、下記の様な説明文があります。
「グローバルなウイスキー産業が直面している可能性と課題についての洞察、考え、議論を共有するフォーラムです。ここは、アイデアが生まれ、イノベーションが提示され、確立された真実に挑戦される場所です。」

2017年にスウェーデンのボックス蒸留所(現ハイコースト蒸留所)にて第1回が開催され、その後、約18ヶ月毎に世界中の蒸留所で開催されています。

第1回 2017年 ボックス蒸留所(スウェーデン)
第2回 2018年 コッツウォルズ蒸留所(イングランド)
第3回 2019年 ウェストランド蒸留所(米国シアトル)
第4回 2022年 スタウニング蒸留所(デンマーク)

ワールド・ウイスキー・フォーラム YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@worldwhiskyforum6859

今回は、アジア地域での初開催となりました。世界16ヶ国から100名を超えるウイスキー業界の関係者が集まり、議論を深めました。今回の参加費は、3日間のプログラム(宿泊費・食事込み)で1,320米ドル(約20万円)でした。

主催者は、ウイスキー業界のエキスパートたち

主催者は、スウェーデンのヤン・グロース氏と、ウイスキー評論家のデイヴ・ブルーム氏。

ヤン氏は、ディアジオを始め、有名なブランドのアンバサダーを歴任してきた方です。私は、彼がボックス蒸留所(現ハイコースト)に在籍していた2015年に、軽井沢蒸留所で会っていました。

私が軽井沢の製造設備一式を落札し、11月に解体と運び出しのため、軽井沢蒸留所の作業現場に一週間張り付いていました。丁度そのタイミングでボックス蒸留所の人々が来日していたので、私が彼らに「軽井沢の最期の様子を見に来ないか?」と声を掛けたところ、一行がわざわざ足を運んでくれました。そのとき、ボックス蒸留所長ロジャー氏とともに、ヤン氏がいたのです。

ヤン・グロース氏
デイヴ・ブルーム氏

ウイスキー評論家として高名なデイヴ・ブルーム氏については、私が語るまでもないでしょう。

私とデイヴ氏のお付き合いは、私がガイアフローを設立した2012年よりも昔に遡ります。私はひとりの愛好家として、2000年代にウイスキーライヴなどウィスク・イー主催のイベントに頻繁に顔を出していました。そこで度々お会いするうちに、顔を覚えてもらいました。

最も印象的だったのは、青山で開催された寿司とウイスキーのペアリングセミナーでした。デイヴ氏が講師として、様々なスコッチウイスキーと寿司ネタのペアリングを体験しました。その締めは、カリラのシングルカスクと「ビッグボーイ!」と紹介されたカニ味噌。ソルティな二品の合体は、ラストに相応しい強い印象を残してくれました。

2012年にカバラン蒸留所を訪れた際も、デイヴ氏は台北のウイスキーライヴ参加のために訪台していました。夜にはテイスティング・セミナーを行い、その席上で「世界では新しいやり方の蒸留所がどんどん出てきている。これからは特徴あるウイスキー造りが求められているんだ」とコメントされ、それが静岡蒸溜所のひとつの指針となりました。

2023年、デイヴ氏が静岡蒸溜所に初めて来てくれました。コロナ下で東京バーショーも開催されず、久しく顔を合わせる機会も無かったので、数年ぶりでした。ひとしきり案内をしてテイスティングを終えた後、今回のフォーラムへの登壇を打診されました。正直、存在は知っていたものの、どんな内容なのかは全く知りませんでしたが、とにかくYes!と答えました。後になって、聴講するのが業界の人々で、英語でのプレゼンや質疑応答をすることを知り、真っ青になったのでした(笑)

余談ですが、弊社の若い社員=自称ウイスキーマニアたちに「デイヴを知ってる?」と訊ねたところ、ほとんどの者が知らないという実体が判明し、ショックを受けました。昔は情報が少なくて、僅かな専門誌や書籍にかじりついて読んだものですが、今はネットだけで満足することが多いのでしょうか。

Day 1

会場は、長野県小諸市の小諸蒸留所

今回の会場は、長野県小諸市にある、小諸蒸留所でした。

軽井沢町の西隣に、メルシャン軽井沢ウイスキー蒸留所が存在した御代田町があり、さらに西が小諸市となります。現在ではこのエリアに、複数の新しいウイスキー蒸留所が誕生しています。

個人的には、軽井沢、そして小諸といえば、漫画「軽井沢シンドローム」の舞台であり、ついつい街中にジープや928や5ターボが走っていないか、キョロキョロとしてしまいます(笑)

スタートは、小諸蒸留所の見学ツアーから

2月の小諸といえば例年なら氷点下でもおかしくないそうですが、ちょうど開催期間中は暖かいお天気になり、凍えずに済みました。

小諸蒸留所は、ホテル事業を営むオーナーによるもの。壁面はガラスで開口部が大きく、広々としたビジターセンターや会議室が隣接し、大人数のイベントにうってつけの建物でした。弊社も含めて、一般的なクラフト蒸留所はコンパクトで大人数が入れるスペースが無いので、小諸蒸留所の設計は画期的と言えるでしょう。

当日は見学ツアーからスタートし、 まだ真新しい木槽とステンレス発酵槽が並ぶ蒸留所内と、樽のような半円形の熟成庫を見て歩きました。

まさかの転身を遂げたイアン・チャン氏

小諸蒸留所のウイスキー造りの指揮をとるのは、台湾出身のイアン・チャン氏。

彼は、台湾のカバラン蒸留所のマスターブレンダーとして、世界に名を轟かせた有名人。台湾ウイスキー界のヒーローと呼んでも過言で無い人物です。2020年に退職する際は、アンバサダーとして世界中を行脚する多忙な日々を過ごし、十分やり切ったと感じたそうです。

退職してフリーになったところ、小諸蒸留所から招聘を受けたとのこと。オーナーの島岡高志氏は中国出身ということもあったのかもしれませんが、意外にも承諾したのだそうです。彼自身もまさか日本に来るとは思っていなかったそうですが、もっと驚いていたのは日本の業界の人々でしたね。もちろん、私もとても驚きました。

私自身、彼とは2012年にカバランを訪問した際に知り合いました。

2012年7月、私がウイスキー蒸留所の建設を志した際、最初にアドバイスを求めたのが、ベンチャーウイスキーの肥土伊知郎氏でした。そのとき「カバラン蒸留所を見た方がいいですよ」とお勧めいただいたことが、同年9月の訪問に繋がりました。(この時、ツアーのコンダクターだった遠山公隆氏は、今やウィスク・イーの社長さんです)

翌2013年、日本市場のインポーターを見つけるべく、彼が来日し、静岡の弊社をわざわざ訪ねてくれました。カバランのオーナーである金車が巨大企業グループであることを理解していた私は、企業規模が違いすぎて現実的で無いと判断して見送った経緯があるのですが、それ以来、個人的なお付き合いは続いていました。

彼は、穏やかで優しい性格と、義理人情に厚い人柄で、日本に親しみやすいメンタリティの持ち主だと思います。彼が日本に来てくれたことは、日本ウイスキー界にとって、大きなプラスですね。

盛大なウェルカムパーティー

初日の夜は、ビジターセンターを会場にして、ウェルカムパーティーが盛大に開催されました。

小諸市長だけでなく、軽井沢町長も駆けつけ、故ジム・スワン博士のご遺族も参加するなどし、乾杯は小諸ニューメイクのハイボールでした。

ホテルグループとしての威信をかけたパーティーは豪華で、料理人やサービスはホテルがそのまま移動してきたような雰囲気でした。

Day 2

セッション「創業の哲学」

フォーラムのプログラムは、各セッション毎3〜4名の話し手(スピーカー)が順に事例発表をして、その後に質疑応答をするスタイルでした。当然ながら、全てのコミュニケーションが英語で行われます。

最初のセッションのテーマは「創業の哲学」。新しくウイスキー蒸留所を造った人達が、どんなことを考えているのかをシェアする内容でした。

いま、世界中でウイスキー蒸留所が激増しています。

アメリカで数千ヶ所、イングランドやアイルランドで各50超、フランスやドイツで各100超、中国で30超、オーストラリアで200超、そして日本は100超です。大手各社も大増産に走る中、これから世界のウイスキーはどうなっていくのか?ということは業界の最も大きな関心事です。

今回の参加者の中でも将来に対する危機感は強く、3日間の中で「今後どうやって生き残っていくのか?」という問いが何度も投げかけられました。

オーフレイム蒸留所(オーストラリア) オーナー ジェーン・オーフレイム氏

タスマニアで4番目の蒸留所として、2007年に父親ケイシー氏が創業。ジェーンさんは、その娘さんです。ここに限らず、クラフト蒸留所は家族経営のところがほとんどですね。

静岡蒸溜所 創業者 中村大航

とにかく英語でのプレゼンとあって、前の晩はよく眠れませんでした。私は留学も、海外で暮らした経験もありません。中学生レベルの英語しか話せませんが、それでも何とか、ひとりで海外出張もこなしています。だから一応、意志は通じる程度だとは思います。そして今回、台本を書くこともしませんでした。書いた物を読み上げるスタイルだと、言葉が響かないと思ったからです。

私がお話した内容は、下記の様な内容でした。
・元々、ウイスキー愛好家のひとりだったこと
・スコットランドでキルホーマンへ行って、ウイスキー造りを志したこと
・いろいろな人との出会いを経て、蒸留所を建てたこと
・自分が飲んでみたいウイスキーを造っていること
・他がやらないことに、実験として挑戦していること
・市場の活性化のために、いろいろな行事を開催していること
最大30分しかなかったので、普段のセミナーの半分以下のボリュームでしたが、なにしろ英語で話さないといけないので、冷や汗ものでした。

ポケノ・ウイスキー(ニュージーランド) 創業者 マシュー・ジョンズ氏

スコッチウイスキー業界で長い職歴を持ち、ニュージーランドに移住して、2017年に蒸留所をスタート。製造は自動化しており、スコッチらしいやり方です。ちょっとマシュー・マコノヒーに似ていてカッコイイですね。

スリー・ソサエティ蒸留所(韓国) 創業者 ブライアン・ドゥ氏

韓国初のウイスキー蒸留所を建設した氏は、韓国系アメリカ人で、英語はネイティブでした。元は人気クイズ番組の司会者だったという、異色の経歴の持ち主。格好も、作務衣(?)にテンガロンハットという奇抜なスタイルです。

質疑応答では、いくつかの質問が出てきました。
・世界中でたくさんの蒸留所が出来ているが、どう思うか?
・どんな強みがあるか?どうやって、それを創るのか?
・世界にはいろいろな賞があるが、それについてどう考えているか?
・自分が過去に戻ったとしたら、再び蒸留所を建てるか?
・蒸留所を建てようとしている人に、どんなアドバイスをするか?

中でも最後の2問は、私の答えが、他の人たちと特に違っていました。

「再びやりますか?」の問いに、他のスピーカーが「もちろん、またやるよ!」と威勢良く答えるところ、私は「できないと思う。こういう難しいプロジェクトには運が重要。私の場合は、タイミング良くテレビでマッサンが放送されたことで実現できたが、再び同じようなことが可能だとは思えないから」と弱気な回答をしました。

アドバイスについては、他の人が前向きな言葉をかけるのに対し、私ひとりだけ後ろ向きで「私はオススメしないですよ。本当に大変だからね。でも、蒸留所を建てる人は、そもそも他人のアドバイスに耳を貸さない人だからな」と答えたところ、会場中の笑いを誘いました。

以上、必死で英語のみの3時間のセッションを乗り越えたのですが、意外とみなさんの反応が良くてホッとしました。終わった後には、多くの人から「とても素晴らしい内容だったよ。ありがとう」との声をかけていただきました。

セッション「日本ウイスキーの経験」

今回は日本での開催とあって、100年の歴史を持つ日本ウイスキーのセッションが組まれました。ニッカ、サントリー、キリン、ベンチャーウイスキーという、業界を支える4社が揃い、ウイスキー不遇の時代を経ての体験を語りました。

ニッカウヰスキー チーフブレンダー 尾崎裕美 氏
ニッカウヰスキー グローバルマーケティング&セールス・ジェネラルマネージャー 梶 恵美子 氏

ニッカと言えば、日本ウイスキーの父である竹鶴政孝氏の創ったメーカーです。その歴史は、日本以外の国にとっても伝説ですね。2001年に余市シングルカスク10年が、ウイスキーマガジンで世界最高賞を受賞したときから、日本のウイスキーは世界から熱い視線を向けられるようになりました。

そのウイスキー造りに「トリック」は無い、と力説する尾崎ブレンダーと、絶妙な通訳で笑いをとる梶さんのコンビが印象に残りました。

サントリー マスター・ブレンダー 福與伸二 氏

日本のウイスキー市場は、100年の間に栄枯盛衰の大きな変化を経てきました。いわゆる「耳の痛い話」だったわけですが、これは多くの若い蒸留所が経験したことの無い状況であり、各国からの参加者は熱心に耳を傾けていました。

特に参加者のサントリーに対するリスペクトが強く感じられ、神妙に聴講する空気感があり、福與さんのキャラもあるとは思いますが、他のスピーカーのときとは違う緊張感が漂っていました。

キリン マスター・ブレンダー 田中城太 氏

キリンの富士御殿場蒸溜所はアメリカのシーグラム社との協業にルーツがあり、スコッチウイスキーが源流である日本ウイスキー界にあって、異彩を放っています。また、モルトとグレーンの両方の原酒を製造する蒸留所は珍しく、そのウイスキーもラインナップの見直しが進んでいます。

今回、質疑応答の中で出た質問に「御社のライバルはどこか?また、どうやって競争に打ち勝つつもりか?」という投げかけがありました。過去にウイスキー不況を経験し、肩を寄せ合ってウイスキー市場の活性化に取り組んできた各社にとっては、「競争で相手に勝つ」という発想は、相当に違和感を感じる視点であったようです。

田中城太さんは、その不快感を隠さず、「私の辞書に、競争という単語はありません!」と高らかに宣言されていました。他の話し手も、その言葉に頷いていたと思います。

ベンチャーウイスキー 創業者 肥土伊知郎 氏

「Back to tradition」をテーマに、フロアモルティングによる製麦や、製樽工場でのミズナラ樽の製作などを行っていることを説明されていました。英語でのプレゼンではありましたが、結構、笑いをとってましたね。

また「守破離」という日本の考え方を紹介して、ウイスキーでも同じように基本を大切にしつつ、進化を目指していることを明らかにしていました。

ベンチャーウイスキー アンバサダー 吉川由美 氏

吉川さんもスピーカーとしての参加でしたが、今回はサポートに徹していて、お話されることはありませんでした。

世界のウイスキーの重鎮が集まっている場でもあり、各所で様々な国の関係者が談笑する光景は、フォーラムならではと言えるでしょう。

参加者は、世界中の蒸留所、サプライヤー、販売業者など

今回の参加者は、蒸留所の関係者だけでなく、原材料の麦芽や樽のサプライヤー、各国のインポーター、リテーラー、そして蒸留所の設立を計画中の会社など、様々なメンバーが集まっていました。

当然ですが、セッションも会話も英語のみです。日本人の参加者は限られていましたが、欧米だけでなく中国、韓国、台湾、インドなどからも参加があり、国際会議というレベルのイベントでした。

また、今回のフォーラム中には、ドキュメンタリーの撮影も進行していました。ジャパニーズウイスキーの造り手を追う内容で、会の前後には参加した各蒸留所での撮影も行われました。

日本からは、他に嘉之助蒸溜所も参加されていました。こちらはスターワードと同じく、ディアジオからの出資を受けているという共通点がありますね。販売面では、海外も含めて独自に流通ルートを開拓しているとのことです。

Day 3

セッション「輸出の際の課題」

スターワード蒸留所(オーストラリア) 創業者 クリス・ミドルトン氏
オーストラリアの有名なスターワードの創業者は、とんでもなく早口の理論家でした。ディアジオのディスティル・ベンチャー社の出資を受け、製造規模を拡大しています。しかし、販売面ではディアジオからのリクエストはないらしく、販売面では自由裁量が多分にあるそうで、自分たちで各国のインポーターを見つけて輸出しているそうです。

ジョン蒸留所(インド) 創業者 ポール・ジョン氏
インドのシングルモルトで、アムルットと並ぶ知名度を持つポール・ジョン。その創業者は、イメージ通りにパワフルな人物でした。

カードロナ蒸留所(ニュージーランド) マスター・ディスティラー サラ・エルソム氏

2015年に創業のニュージーランドの蒸留所。ウイスキーだけでなく、ジン、ウォッカ、リキュールなどを製造しています。創業者である社長を始め、製造なども女性陣が活躍している蒸留所のようです。

2023年、オールドプルトニー、スペイバーン、バルブレア、アンノックを有するインターナショナル・ビバレッジ社に買収されました。

セッション「ウイスキーはどうなるのか?」

内モンゴル孟台蒸留所(中国) 創業者 リチャード・L・ルゥ氏

氏は中国のウイスキーマガジンの編集長をしていて、中国のウイスキー業界をリードしている人物です。

現在、中国国内では30を超える蒸留所が稼働しているとのこと。その隆盛に合わせて、チャイニーズウイスキーの基準作りが国として進行しているそうです。

孟台蒸留所は、中国でも有数のスケールがあり、モンゴルに巨大な蒸留所が出来たとのことで話題になっているそうです。

アムルット蒸留所(インド) ヘッド・ディスティラー アショク・チョカリンガム氏

アムルットと言えば、インディアン・シングルモルトの代名詞です。現在は、第2蒸留所も順調に24時間稼働し、生産量を大きく伸ばしているとのこと。将来的には、更なる飛躍も見据えているそうです。

蒸留所は南インドに位置するアムルットですが、原材料の六条大麦は、北部のパンジャブ地方で栽培されています。

アーチー・ローズ蒸留所(オーストラリア) マスター・ディスティラー デイヴ・ウイザース氏

オーストラリアのアーチーローズでは、伝統的なマッシュタンに代わり、マッシュ・フィルターを採用したことで、「大地から生まれたウイスキー」と称して、大麦だけでなく、小麦を含めて様々な穀物を原材料にしてウイスキーを造っているとのこと。

サントリー マスター・ブレンダー 福與伸二 氏

1980年代半ばから、日本のウイスキー業界は右肩下がりの市場縮小が25年続く状況の下、サントリーがいかに地道にウイスキー造りに取り組んできたかを紹介されました。

数多くの研究者を留学させ、学位を取得し、数々の基礎研究の成果を実際の製造現場に反映してきた実績を淡々と説明され、会場の参加者はひと言ひと言を熱心に耳を傾けていました。

中でも目をひいたのは、サントリーが2019年に山崎と白州の全ての初留釜を直火に切り替えたこと、そして2021年にはグレンギリーをも直火に戻した事実です。

静岡蒸溜所でも薪直火を採用していますが、その発端は元サントリー嶋谷幸雄氏(白州蒸溜所初代工場長、山崎蒸溜所工場長を歴任)の「直火には何とも言えない良さがある」という言葉を2012年に直接拝聴したことでした。

現在の日本は、直火蒸留を行う蒸留所が、本場スコットランドよりも多くなっています。そのコントロールには難しさがあり、熟成にも年月がかかるとのことですが、特徴あるウイスキー造りには欠かせない技術だと言えるのでしょう。

クロージング

3日間の濃密なプログラムを終えて、フォーラムは閉会となりました。小諸市と小諸蒸留所の方々の手厚いホスピタリティに感謝いたします。

フォーラムが閉会した後も、パーティーや小諸市によるウイスキーイベントなどが続き、小諸がウイスキーに染まった一週間になったそうです。

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