江井ヶ嶋ウイスキーのプライベートボトル第3弾「桜」を発売いたします。2013年10月の「紅葉」、2014年12月の「桐」に続く、シリーズ最新作となります。
前作「桐」は、おかげさまで大変な人気で、即日完売となりました。今回の「桜」は400本ご用意させていただきましたが、全国の酒販店様から驚くほど多くのご注文をいただき、その数分の一しかお応えできない結果となりましたことをお詫び申し上げます。
さて「桜」について、ご紹介しましょう。昨年春に江井ヶ嶋酒造を訪問した際、平石社長から「ひとつだけ変わった樽がある」とご紹介いただきました。それが今回の赤ワイン樽でした。
社長からは「詰め替えて日が浅いから、味は…?」とお聞きしましたが、とにかく貯蔵庫に出向いて、樽から直接試飲してみたのです。そうしたら、ベリーを思わせる甘さが際立つ、とても個性的で美しい味わいでした。試飲した瞬間、思わず平石社長と顔を見合わせて、ふたりで「いいですね!やりましょう!」と即決でした。ただし、年数も若く、味わいも強すぎる面もあったため、もうひと夏越すことにしたのです。とはいえ、それが味わいにどう影響するかは、その時点では全く予想がつきませんでした。
今年になって改めテイスティングしたところ、とろりとした甘みが見事に落ち着いて、タンニンを程良く楽しめるウイスキーになっていたことを確認できました。赤ワイン樽フィニッシュが、上品に実を結んだと言えるでしょう。弊社の女性スタッフ陣の評判も良く、みなさんの感想が今から楽しみです。
さて、今回はラベルも桜をテーマにデザインいたしました。筆文字は、女流書道家の岡西祐奈さんからご提供いただきました。岡西さんは、個展やパフォーマンス、作品提供など幅広く活動され、国内のみならず海外でもご活躍されています。(公式サイト http://okanishi-yuuna.com/ )
題字「桜」ですが、その形は人が疾走しているかのようなスピード感、筆運びからは力強さ、そして脆さを、さらに墨の淡さが儚さを感じさせ、まさに求めていたイメージそのものです。
最後に、この「桜」を含めた江井ヶ嶋プライベートボトルの影の立役者である福谷潤一氏をご紹介いたします。弊社がブラックアダーの総輸入元になる以前から、福谷氏には多岐に渡ってご支援をいただいておりました。氏から江井ヶ嶋酒造をご紹介いただいたことがキッカケで、最初の「紅葉」も誕生しました。元はメルシャンの営業職として、軽井沢ウイスキーを販売していたともお聞きしたことがあります。そして長年の間、ブラックアダーのロビン・トゥチェック氏をサポートされてきた方でもありました。
残念なことに、福谷氏は昨年末に急逝されました。享年48歳。弊社で打合せを元気にこなしてから、たった一週間後の出来事。早すぎる逝去でした。
故人は表舞台に立つことを良しとせず、いつも裏方として仕事の下支えをされていました。何か仕事の結果が出たときには必ず「いやぁ、ありがとうございます。中村さんのお陰ですよ」と言っていただきました。故人がそのときに見せる、自らも達成感に溢れた満足そうな笑みは忘れられません。そして、いつも続けてこう言っていただきました。
「これから面白くなりますよ!」
日本のウイスキー業界がもっともっと面白くなるよう、故人の分も合わせて精進していくことを改めてここに誓い、さらに前へと進んでいきたいと思います。
春に咲く江井ヶ嶋「桜」を、故福谷潤一氏に捧げます。
ガイアフロー株式会社
代表取締役 中村大航